結論:相談前に決めておくのは「答え」ではなく「3つの整理」

  • AI導入の相談に行く前に決めるべきは、解決策の答えではなく、①解決したい業務課題の範囲の線引き ②社内の推進体制とデータの所在 ③相談先に何を確認したいかの整理、という3つの整理です。
  • この3点を自分の言葉で言えるかどうかで、最初の商談が「御社の課題を一緒に整理しましょう」から始まるか、具体的な業務の話から始まるかが変わります。
  • IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX推進指標」自己診断結果では、多くの企業がこの整理の手前でつまずいています。本記事では、その実測データを手がかりに、相談前に決めておくべき3点を順に解説します。
相談に行く前に、社内で決めておく3つのこと ① 課題の範囲 どの業務の、どこまでを 解決したいか線引きする ② 体制とデータ 誰が推進し、必要なデータは どこにあるかを把握する ③ 相談先への確認 支援範囲・費用構造・撤退条件を 相談前に言語化する
図:AI導入の相談に行く前に整理する3つのポイント。出典:本記事の整理(IPA「DX推進指標」の構成項目を参考に作成)

なぜ「とりあえず相談」がうまくいかないのか

IPAは、企業がDX推進の現状や課題認識を経営層と現場で共有するための自己診断ツール「DX推進指標」を公開しています。経営の仕組みに関する指標(ビジョン・推進体制・人材育成など)と、ITシステム構築に関する指標(データ活用・スピード・ガバナンスなど)の2つの枠組みで、現状を6段階の成熟度で自己採点する仕組みです(出典:IPA「DX推進指標のご案内」https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html、2026年10月6日確認)。

IPAが2024年1月〜12月に提出された自己診断結果1,349件を分析した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」(2025年5月7日公開)では、全指標の現在値の平均が1.67(6段階評価)、目標値の平均が3.34で、差があることが示されています。経営視点指標の現在値は1.66、IT視点指標の現在値は1.69で、いずれも目標値の半分程度にとどまり、レベル4以上に達している企業は全体の**1%**です(出典:IPA公式サイト内「DX SQUARE」https://dx.ipa.go.jp/dx-suishin-2025 掲載の同レポート要約値、2026年10月6日確認)。

この数値は、「AIを入れれば解決する」と相談に来る企業の多くが、その手前にある課題の範囲・推進体制・データの所在を社内で詰めていない状態であることを示しています。相談の場でこの3点をゼロから洗い出すと、初回の商談はヒアリングだけで終わり、具体的な提案や見積りの話に進むまで時間がかかります。相談前にこの3点を整理しておくことが、商談を前に進める最短路です。

①解決したい業務課題の範囲を線引きする

最初に決めるべきは、「AIで何でも解決したい」という曖昧な期待ではなく、どの業務の、どの工程を、どこまで解決したいかという範囲です。範囲が広すぎると相談先は何から提案すべきか判断できず、狭すぎると本来任せられる業務を見落とします。

線引きの手がかりになるのが、「その処理は取り消せるか(可逆性)」「影響は社内で閉じるか社外に及ぶか(影響範囲)」「定型作業か意思決定か(判断の性質)」という3つの軸です。議事録の要約や資料のドラフト作成は社内で完結し取り消しやすい業務、契約締結や顧客への重要通知は人間の承認なしに任せてはいけない業務に分かれます。この軸の立て方を詳しく整理したのがAIエージェントに任せていい業務・任せてはいけない業務の線引きです。相談前にこの軸で自社の業務を仮に分類しておくと、「まずこの業務から任せたい」という範囲を相談先に具体的に示せます。

②社内の推進体制とデータの所在を把握する

次に決めておくべきは、「誰が推進するのか」と「必要なデータがどこにあるのか」です。IPAのDX推進指標でも、経営の仕組みに関する指標の中に推進体制・人材育成の項目が、ITシステム構築に関する指標の中にデータ活用の項目がそれぞれ含まれ、この2点は経営の仕組みとIT基盤の両輪として位置づけられています(前掲、IPA「DX推進指標のご案内」)。

相談の場で「誰が社内の窓口になるか決まっていない」「必要なデータがどのシステムに、どの形式で入っているか分からない」という状態だと、相談先は提案の前提を確認するところからやり直すことになります。最低限、次の2点を相談前に言語化してください。

確認項目 相談前に言語化しておくこと
推進体制 社内の窓口担当者・決裁権限者は誰か。現場部門の担当者は巻き込めているか
データの所在 対象業務で使うデータは、どのシステム・どの形式(Excel・基幹システム・紙など)にあるか

この2点が曖昧なまま相談すると、提案内容が体制とデータの整理という前段の話に戻りやすくなります。先に自社で把握しておけば、相談先は実装・運用の話から提案できます。

③相談先に何を確認したいかを整理する

最後に決めておくべきは、相談先への質問リストです。「何かいい提案をください」という聞き方では相談先の得意領域に話が流れやすく、自社の課題に合った比較ができません。

相談先を比較する軸としては、支援範囲が戦略設計からPoC・本実装・運用・内製化まで一気通貫でつながっているか、特定の技術・製品に偏らない提案か、見積りの前提(除外範囲・初期費用と月額の線引き・撤退条件)が明確かという点が重要です。この比較軸と発注前に確認すべき項目を整理したのがAIエージェント導入コンサルの選び方です。相談前にこの記事のチェックリストに目を通し、聞きたい項目を3〜5個に絞ってから相談に行くと、初回の商談で具体的な回答を引き出せます。

まとめ

  • AI導入の相談に行く前に決めるのは「正解」ではなく、①課題の範囲 ②推進体制とデータの所在 ③相談先への確認事項という3つの整理です。
  • IPAの「DX推進指標」自己診断結果(1,349件・2024年版)では、全指標の現在値平均が1.67、目標値平均が3.34と差があり、レベル4以上に達している企業は全体の1%です。多くの企業が、相談の手前にあるこの整理を済ませていない状態で検討を始めています。
  • 3つの整理を済ませてから相談に行くと、初回の商談を「ヒアリングのやり直し」ではなく「具体的な提案の検討」から始められます。

自社の業務範囲・体制・データの整理から相談したい場合は、AIエージェント導入のコンサルティングをご覧ください。業務選定・PoC企画から本番運用・内製化の設計まで、実務目線でご相談いただけます。この3つの整理を自社の状況に当てはめてみたい場合は、お問い合わせよりお気軽にご相談ください。


出典(確認日:いずれも2026年10月6日)

  • IPA「DX推進指標のご案内」https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html (DX推進指標の構成・活用方法を確認)
  • IPA「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」(2025年5月7日公開、分析対象は2024年1月〜12月提出分の1,349件)。全指標の現在値平均1.67・目標値平均3.34、経営視点指標現在値1.66、IT視点指標現在値1.69、レベル4以上の企業が全体の1%という数値は、IPA公式サイト内「DX SQUARE」https://dx.ipa.go.jp/dx-suishin-2025 に掲載された同レポートの要約値を使用。